違国日記

違国日記、いいです!全ての、「誰かと一緒に暮らす人」におすすめ。

一応言っておくと、「異国」は全く関係ないです。最初「異国ルポルタージュか??」と思って開いたけど、いわゆる「疑似家族もの」あるいは「ある日突然親になる系」です。年の離れた親戚の女性二人の共同生活です。まったく価値観が異なるので、「違う国の女王ふたり」になるわけです。日常で感じる、「あ、このひとは違う国の人だ」・・・という心のざわつきを上手に描き、かつ、救いがあるので読後感はさわやか。

こういう「疑似家族もの」のセオリーだと養子になったりするのですが、まきおちゃんは未成年後継人であるにとどまります。彼女はマンションも買って自分の城を作り、人生で子どもと接点のない、自分だけの国を作り上げた女性です。そんな彼女が愛する「ひとりでいること」の中に、たくさんノイズが入ってくる、揺さぶられていくのは、単純にいい話だとも割り切れず、こころがキュっとなります。「ひとりで生きていくことをえらぶ」は、別に悪いことじゃない、彼女が自分の意思で選んだことだから。たぶん、引き取る前は、何よりもひとりでいることを優先にしていたのではないでしょうか。そういう、人生の最優先事項を、自分の勢い(というより、倫理観)で朝(登場人物の名前)を引き入れることによって、一番の優先事項にはなかなかできなくなっていくという事実も、この作品を読み応えがあるものにしています。

「一人一人の感じ方はそれぞれであり、それに干渉されることはない。」といったような、初期に出てきてなんども繰り返される言葉も素晴らしい。だけど、一緒に暮らしていくとなると…など、言葉がしみるし、その言葉が生活に染み渡っているように感じる作品です。個人的には、姉はまきおちゃんのことが好きでしょうがなかったんだけど、陽キャ故にねじ曲がって伝わっちゃったんじゃないかなあ。そして、朝の「今日のごはん」が、地に足がついていて、試行錯誤していて、いい。生活を愛する人という感じがする。

何回か読み直しているのですが、ヤマシタトモコさんという人は、とてもたくさん作品を作っている。めまいがするくらい。こんなにたくさん描いてきたら、こんなにも深く美しい作品を作ることができるのか・・・と思うと感極まった。私も描いていこう。

 

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違国日記 2 (フィールコミックスFCswing)

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違国日記 3 (フィールコミックスFCswing)

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