私は高校生のころ横浜に住んでいて鎌倉の美術予備校に通っていました。
16歳の時です。
夕方、学校が終わって横須賀線でクロッキーしてから教室で課題を読んで紙を買って鉛筆を削っていた時。
しゃっしゃと鉛筆をナイフで削る音と、教室に入ってきた講師の足音。
床面は黒く、カーペットを引きはがした後のデコボコがのこっていて、あらゆるところが絵の具で虹色に染まっている。まだみんなが揃っていなくて、シーンとした教室。
鉛筆を置くと、講師が課題の用意で棚に向かう足音。だけが聞こえる。
あの時に、シーンとした音の中で足音だけが響いている時間と空間に放り込まれて、
脳が震えているのを静かに感じていました。
あの体験を皮切りに、時々、例えば静かな部屋で本をぱらぱらめくる音だけが響く時やいい空間を提供してくれる美術館での足音などに脳が如実に反応するようになりました。
比喩ではなく、実際に頭の中身はゆさゆさ揺さぶられているのを感じるので、なにかが私の琴線に触れているのでしょうね。
ただ静かでなにか物音がすればいいというわけではないし、とてもうるさいパーティーで音楽にダイブしているときも起こることもあるのですが。
またあの脳の揺さぶられを体感したくて、私はなるべく部屋を静かにして待っているのかもしれません。