思春期にしか描けない、清家雪子 「孤陋」で震える

その時しか書けないものを読むと震える。

清家さんの短編、「孤陋」がまじめな時間2に収録されている。

発表時の名前は銀峰瑞穂。満場一致で四季賞を取っていた。

 

ドライな賢さの暴力

女学生ながら頭の回転が速く、哲学を持ち、やや冷たい視線で世の中を眺める主人公。

ある時、彼女が拳銃を拾う。その拳銃と元所持者が彼女をつきまとい、物語は始まる。

彼女は妄想の中で銃を使い、しかし、「使わない自分の強さ」に陶酔する。妄想なのか現実なのかが反転していきながら、細かく情景を描写していく。「まわりがバカに見える」感覚を持ったことがある子憎たらしい人の心に刺さりまくってくる。

 

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 清家ワールドの脳内映画とネーム

彼女がインディーズ時代、鉛筆でごりごりとイベントレポとか考察イメージをウェブサイトで発表していた時は本当にありがたいものをみせてもらっているなという感じだった。

ストーリーについては、(当時は)脳内で映画の様に想像を膨らませてからネームに起こしていったと語っていたように思う。 インディーズの時、漫画の内容(というかネーム・レイアウト)をパクられた時、作品のテーマとかストーリーをパクられても悔しくないけど、ネームを取られると一番力を入れてるところを盗まれた感じで悔しいと言っていたのを思い出す。 そういうだけあって、詩や哲学への造詣の深さとレイアウトの斬新さが相まって、引き込まれる。中島みゆき「ファイト」を漫画に起こしている時もあって、全部鉛筆で描いてあるんだけど、描いているというより描かされているような勢いがあった。筆致がとにかくすごいスピードで描かれたんだなって感じ描かれ方。魚が川を上っていく様子とか、鉛筆であんなにかき分けられていて本当に驚きだった。ペンになるときれいなんだけど、あの速い筆致の鉛筆画もまた見たい。